2013/06/06| Category:出張レポート
イタリア出張レポート ⑥サンタ・テレザ
現在人気急上昇中の、オーガニックワイン「プラート」。
今回は、そんな「プラート」を産み出すシチリアのワイナリー、「フェウド・ディ・サンタ・テレザ」を紹介します。
●サンタ・テレザの場所
サンタ・テレザは、シチリアの南東部に位置するヴィットリアというところにあります。
ヴィットリアは、古代ギリシャがシチリアを支配していた時代から、高品質なワインが生産されることで知られていた地域です。シチリアで唯一のDOCG、チェラスオーロ・ディ・ヴィットリアがあることからも、その伝統がうかがえます。
●サンタ・テレザの歴史
フェウド・ディ・サンタ・テレザは、ヴィットリアで50年以上続くワイン商の息子として生まれたマッシモ・マッジョ氏と、トレントの生産者ステファノ・ジレッリ氏の、共同プロジェクトとして立ち上げられました。
「有機栽培による高品質なワインをつくる」という目的のもと、土壌・気候・微気候(ミクロクリマ)すべての条件を満たしているこの土地、17世紀に実在していた「サンタ・テレザ」の跡地に近代設備を投入し、新しいワイナリーを作り上げました。
有機栽培に関する豊富な知識を持つアンジェロ・マランジョ氏を畑の栽培責任者として向かい入れ、日々徹底して有機栽培に取り組んでいます。
●ワイナリーを見学!
こちらが、17世紀当時の醸造設備。300年以上も前の醸造設備を見学できるなんて、大変貴重な体験です!
こちらが現在の醸造設備。
ブドウの新鮮さを最大限に活かすため、すべて低温管理下のステンレスタンクで発酵しています。
●温暖で涼しい葡萄畑
続いて葡萄畑を見学。
ヴィットリアは、写真のような、鉄分を多く含む赤土の「テラロッサ」土壌が特徴です。
表面を覆うテラロッサの下には、水はけのいい石灰質土壌があり、ブドウの木の根がミネラルや水分を得ることができるので、雨の少ないシチリアでも、ブドウが苦しまないのだそう。
4月初旬に訪れたのですが、すでに葉っぱが青々としています。同時期、トスカーナではまだ葉すら出ていませんでしたが、ここでは、品種によっては蕾を付けている木もありました。
典型的な地中海性気候のシチリアは、一年を通して温暖な気候。
さぞかし暑いのだろうと思われるかもしれませんが、海から8km程の場所にある為、海風が常に吹いており、畑での気温はそれほど上がりません。
実際この日も、太陽が燦々と降り注いでいましたが、涼しく感じるくらいでした。
太陽の光をちょうどよく浴びられるよう、また海からの風を受け止められるよう、苗木を工夫して配置しています。
強い海風の影響で、ブドウの木にカビやキノコが発生してしまう病害が起こるらしいのですが、銅をまくことで予防しているそうです。
有機栽培で認められている銅の使用量は、1ha当たり5㎏までなのですが、畑を常に見回り、丁寧に手入れすることで、3.5kgまで抑えられているとのこと。
ワイヤーにくくりつけられた赤いひもは、一種のフェロモン剤で、蛾などの昆虫を回避しています。
土壌中の昆虫は、畑の環境に役立つので、排除せず、草や花も直前まで刈り取らないようにしているとのこと。畝間に咲く草花は、とっても綺麗です。
●肥料は「マメ科の植物」
もう一つ、変わった取り組みとして、下の写真のような豆が肥料として用いられています。
マメ科の植物が、畑のすぐそばに植えてあり、収穫した豆を草ごと天日干しにし乾燥させてから、畝間に炊き込むのだそう。
草に着いた多様な昆虫や微生物が、土壌環境を豊かにしてくれ、ブドウの木に有効な栄養分を与えてくれるのだそうです。
サンタ・テレザで用いられている肥料は、これのみだそうです。
●「ハーブ」が天然の防壁
畑の周辺には、ハーブが沢山植えてあって、ブドウを狙いに来た野生動物を回避しています。
(畑の栽培責任者のアンジェロ氏は、ハーブにとっても詳しくて、ひとつひとつ、香りや特徴を教えてくれました。)
オレンジやオリーヴももちろんオーガニック。
その他、ワインセラーの屋根には全てソーラーパネルが取り付けており、自家発電をしています。
シチリアの豊かな自然を次世代へ残したい、という思いを強く感じました。
●井戸?
ちなみに葡萄畑には何故か井戸が・・・・。
大干ばつに見舞われていた17世紀初頭、農夫がこの場所で聖テレザ像を見つけ、掘り起こしたら大量の水が出、この地域を救ったそうです。後に井戸として整備され、現在も近隣の住民に利用されているそうです。
その時発見された聖テレサ像は園内に祀られていました。
●どんな食事にも合わせやすいワイン
葡萄畑の見学後、ワイナリーで働く方たちが、シチリアの伝統料理をふるまってくれました♪
野菜や果物たっぷりで、ヘルシー!そして美味しい!
サンタ・テレザのワインは、どれも酸がしっかりしており、これがシチリアのワインなのか、と驚かれることも多々あるのですが、今回、ワイナリーを訪れてみて、その理由が分かったような気がします。
太陽をいっぱい受けて凝縮された果実味と、海風によってひきしまったエレガントな酸は、どんな食事にも合わせやすいと思います。
これからの夏に、少し冷やしていただくのも、おすすめです。
(市川)