2013/06/26| Category:出張レポート
2013スペイン出張レポート ロサーダ
バルデシルへの訪問後、お隣のカスティーリャ・レオン州のビエルソまで足を延ばしました。車で1時間弱のところです。
目的地は、この地域の地場品種「メンシア」最高の作り手の一人、ロサーダ・ヴィノス・デ・フィンカ。2010年から取扱いを開始していますが、念願叶って今回が初の訪問となりました。
ビエルソは急成長を遂げるスペインワイン産地のひとつ。その潜在能力の高さは以前から指摘されていて、1960年に「ボルドーワインの神様」として知られるエミール・ペイノー博士は、
「いつの日かヨーロッパで最も優れた赤ワイン産地の一つになるだろう」
というコメントを残しています。
そのビエルソでトップ生産者のひとりと言われるのがこのロサーダ。どんな場所で、どんな人が作っているのでしょうか?
ロサーダは2005年設立の若い生産者。設立後に建てられたワイナリーはとてもモダンなスタイル。
生産者のご紹介。
続いて ロサーダの畑の一部(木の手前部分)。
この一帯の土壌は、丘の麓が粘土質でポムロールに似た性質を持ち、頂上付近がスレートでローヌに似た性質を持つそうです。麓の畑からはカジュアルなスタイルのワイン生まれ、頂上付近の畑からはエレガントなスタイルの高級品が生まれます。
パハロ・ロッホやロサーダは麓の畑から、アルトス・デ・ロサーダや最高級品のビエンキリーダ(現在取扱いなし)は頂上付近の畑から生み出されます。
同じメンシアでもシラーやピノノワールのようなエレガントなキャラクターのものと、カベルネフランのような青さが目立つカジュアルなものとがあり、その違いがどこから来るのかずっと気になっていましたが、こうした土壌の違いが味わいの違いを生み出す一因になっているようです。また、樹齢の古さもエレガントさに関連しているようです。
また、アマンシオさんは、
「ロサーダのワインはエレガントだが、並の品質のものを作っているメーカーのメンシアはタニックでハーモニーがない」とも言い、ビエルソを代表する生産者のひとりとしての自信が垣間見えました。
ワイナリーに入ったところ。床から突起しているのは醸造用タンクの蓋の部分。
選果、除梗、破砕用の設備。
目的のタンクに直接投入出来るよう、足に車輪が付いた可動式になっています。
このワイナリーは葡萄にストレスを与えないよう、すべての行程において重力を利用して葡萄を移動出来るよう、建物全体が設計されてます。建物は数年前に完成したばかりで、このワイナリーが完成したことでワインがさらにエレガントになったそうです。
階段で一階下に降りると、ステンレスタンクが。
上部に「1」とナンバリングされた、最上級ワイン「ビエンキリーダ」用のタンク。他のタンクよりもやや小振り。生産量は最大で3,000本。
ボトリングライン。
2名体制で作業。1名は主に目視での点検。瓶にヒビや欠けがないか判別するセンサーも付いているようですが、「厚みのある良い瓶を使っているからほとんど引っかからない」そうです。
樽熟成庫内。
熟成中のロサーダ、ビエンキリーダ。
スモーキーなニュアンスはやはり樽に由来するそうです。樽はヴィンテージによってローストの加減を変えているそうで、ちょっと強めにしてみたヴィンテージもあったとのこと。今後はそこまでスモーキーにすることはないとのことです。
熟成庫の外壁。メンシアの樹をモチーフにした絵が描かれていました。
ちなみにこの日はかなり暑かったのですが、このフロアは地中にあるためか大変涼しく保たれていました。空調設備がなくとも年間を通じて涼しい室温を保つことが出来るとこと。エコですね。
地上に戻ってテイスティング。
◆ロゼ 5Rosas (日本未入荷) 2012
メンシア100%のロゼ。2012年が初ヴィンテージ。
色はロゼとしてはやや紫色がかった濃いルビー。香りははっきりとした香り立ちで、ストロベリーなどを思わせる赤い果実の香り。味わいは香りに見られるようなストロベリーなどの果実味がたっぷりで、爽やかな酸味が感じられる。
シュールリーでしばらく熟成させることで、フレッシュ感を長くキープしているとのこと。
相性の良い料理は、炊き込み御飯、バカラオ、あんこう、マグロ、脂の多い魚。
ちなみにロゼはコマーシャルダイレクターのマリアさんがアマンシオさんに長年リクエストし続けてようやく実現したのだそう。初ヴィンテージは生産量が少なく手に入りませんでしたが、好評だったため次のヴィンテージからは生産量が増えるそうなので入手出来そうです。
また、ワイン名の「5Rosas」は、ロサーダの5番目のワインなのでこう名付けたとのこと。メインラベルに描かれているバラの数とは関係ないそうです。
◆パハロ・ロッホ 2012
10〜15%は除梗せずに発酵。これは昔ながらのやり方なのだそうです。意外だったのが、パハロ・ロッホはカジュアルなメンシアとして生産したものとばかり思っていましたが、実際には昔ながらのメンシアをつくろうと思ったのが生産のきっかけだったそうです。
最新鋭の設備とその考え方とのギャップに驚きましたが、この姿勢こそがメンシアの良さを引き出し、優れたワインを生み出すことに繋がっているのでしょう。
味わいはアマンシオさんが意図したとおりのフレッシュでフルーティーなスタイル。
相性の良い料理はロゼとほぼ同じで良いとのこと。タパスにも。少し冷やしてパーティーなどのシチュエーションで飲んでほしいそうです。
◆ロサーダ 2009
一部は契約農家から購入した葡萄を使用。樽熟成12ヶ月。10%アメリカンオーク、90%フレンチオーク。
相性の良い料理は肉料理一般。大きいカレイなども。
◆アルトス・デ・ロサーダ 2008(2008年は良いヴィンテージ)
100%自社畑の葡萄を使用。樽熟成15ヶ月。エレガントさがパハロ・ロッホやロサーダと一線を画している。ロースト香、コーヒーの香りが印象的。
相性の良い料理は、ソースをかけた肉料理、チョコレートなど。
◆ビエンキリーダ (日本未入荷) 2011
2013年11月リリース。生産量は最大で3,000本で既に行き先が決まっている。
1906年に植樹した、樹齢100年以上のメンシア。濃縮感、ミネラル感がもの凄い。色合いはグラスの底が見えないほど非常に濃い赤紫色。白檀、お香のような香りが印象的。凝縮したブラックベリーの香り。口当たりはとても滑らか。長い時間をかけて凝縮させたかのような、複雑で奥深いブラックベリー、ブルーベリー、プラム、プルーンなどの果実味が感じられる。
料理はアルトスと同じような料理が良いが、ワインだけでも十分楽しめる。
日本で販売するとしたら1万円以内の価格に収まりそうですが、その価格が信じられないくらいの強烈なポテンシャルを感じました。3,000本の行先が一瞬で決まってしまうのも納得です。
(ちょっとだけ分けてくれないかなぁ・・・)
ちなみに同行した部長は、
「初めてサッシカイアを飲んだ時もポテンシャルに驚いたけど、これはそれ以上かも・・・」
と褒めまくりでした。
最後に、ロサーダのラベルに描かれている赤い鳥の由来について。この赤い鳥は、この場所を訪れたデザイナーのインスピレーションによるもので、架空の鳥だそうです。
帰りにハビエルさんから摘みたてのチェリーをお土産にいただきました。我々の為に、わざわざ当日の朝早くに摘んでくれたとのこと。美味しかったです。
ワイナリー屋上にて記念撮影。
写真は昼間のように見えますが、実はもう20時ぐらいだったりします・・・。
皆さん、遅くまで有難うございました!
(杉村)