2016/06/28 Category:イタリア

【生産者インタビュー】 ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの傑出した生産者「アルテジーノ」

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1970年に設立されたアルテジーノは、モンタルチーノ地方でのリーダー的存在。評論家のマット・クレイマー氏にも「真に検討に値するブルネッロ」と高く評価され、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの優れた造り手として名を馳せています。看板ワインである「モントゾーリ」の2010年ヴィンテージがワイン・スペクテータ誌の2015年TOP100リストで18位にランクインするなど、世界的に高い評価を得ています。

  

今回のインタビューは、有名店「ヴィーノ・デッラ・パーチェ」の内藤ソムリエにご協力をいただき、来日したロレンツォ・グッチ氏(写真:左)に質問をしていただきました。  

 

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 「モントゾーリ」とは?

 

葡萄畑の名前であり、また、ワインの名前でもあります。その名称は、15世紀に建てられた屋敷の名前に由来することは分かっていますが、その屋敷がいつまで存在していたかは定かではありません。モントゾーリという名前だけが残り、次第にこの丘がそう呼ばれるようになりました。

 モントゾーリの丘は、モンタルチーノのサブリージョンとして最近注目されている、いわゆる「ノース・フェイス(北側斜面)」の中心に位置しています。

このモントゾーリの丘に畑を所有しているのはごく限られたワイナリーで、北から、Altesino、Baricci、Caparzo、Valdicavaの4ワイナリーですが、モントゾーリの区画名をラベルに記載できるのはアルテジーノだけです。それは、1975年にアルテジーノが、モントゾーリの地名を地名学に登録して以来認められています。 

  

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モントゾーリの畑で造られる葡萄は、古くから価値あるものと思われてきました。それは、常に葡萄が完全に熟すからです。

他の北側斜面の葡萄畑よりも日照量が多く、高い糖度と豊富なポリフェノール類を得られます。また、標高が高いため、酸やphを維持することも出来ています。

 

主な特徴は?

 

モントゾーリのワインの特徴は、柑橘系果実とバルサミコのような印象です。北側の特徴である厳格なタンニンを持っていますが、それと同時に南側の特徴である完熟した果実味、スパイシーさ、アルコール度数の高さも併せ持っています。

モントゾーリの丘は、主に2つのセクションに分けられます。 主に森とオリーブに囲まれた西側と、葡萄畑が標高230~380mの間に広がる東側及び北側、これら2つのセクションです。同じ丘でも、それぞれ斜面の向きや景観によって表現が変わってきます。

地質学的には、主にやせた土壌で、石が多く、表面は目で見てよくわかるほどの泥灰土です。モントゾーリの土地は、高貴な土壌で、暖かく、そして水はけが良い。つまり、水を吸収しやすいと言われているサンジョベーゼグロッソに理想的な土地だと言うことができます。

北側の中でも特に雨が少なく、同時にどの方角からも太陽からの光を一年中吸収することが出来ます。 

また、モンタルチーノの村がある丘が、南側から来る湿った空気を遮り、モントゾーリの畑を守ってくれます。一方、冷たい風は、夏の好ましい気温差によって障害とはなりません。

 

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アルテジーノは、1975年にモントゾーリ単一畑のワインをリリースし、モンタルチーノにおいて初めてクリュの概念を導入しました。現在モントゾーリのワインは、畑の中でも最も樹齢が古い樹から造られています。

生産量は年間約10,000本から12,000本です。 醸造セラーでの主な目的は、エレガンスとクラシックブルネッロの厳格さを保つことです。 マセラシオンは12日間、アルコール発酵は温度管理されたステンレスタンクで行われ、その後30~36か月オーク樽で熟成されます。

 

    

クリュの名前を冠したワインは他にも幾つかありますが、現在モンタルチーノでは、どれくらいのクリュが認められているのでしょうか?

 

今日、単一畑のワインというのは、いくつも存在しています(クリュに対する法的規制はない)。

ほとんどワイナリーが今や単一畑のワインを造ることができるので、実際にどれくらいのクリュが存在するかは把握できません。

例えば、カサノーヴァ・ディ・ネーリのチェッレタルト ブルネロ・ディ・モンタルチーノ、マストロヤンニのヴィーニャ・ローレート ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ、 ヴァルディカーヴァのマドンナ・デル・ピアーノ ブルネッロ・ディ・モンタルチーノなどの国際的に有名なワイナリーの名前を挙げることは出来ますが、 これらは単一畑を名乗るワインのほんの一部にすぎません。

 

 

今やモンタルチーノには250以上ものワイナリーがあります。その中で、アルテジーノの特徴とは何でしょうか?

 

・ モントゾーリという特別な畑を持っている

・ 自社農園の葡萄しか使っていない

・ 1972年設立で、ブルネッロの生産者の中でも歴史が古い(多くの生産者はファーストヴィンテージ90年代である)

 

アルテジーノは伝統的な生産者であり、クラシックスタイルのブルネッロを生産しています。

アルテジーノのスタイルは、凝縮感のある濃厚ながっしりとしたスタイルではなく、エレガンスとバランスを重視しています。エレガントさが、長期保存を可能にしています。 もちろん、収穫は人の手で行っています。

 

 

他のワイナリーとは一線を画すアルテジーノが持つ利点や、特に優れたポイントとは何でしょうか?

 

アルテジーノは伝統的ですが、同時に革新的なマインドも持っています。75年に最初のクリュワインを造ったのもそうですし、常に畑や醸造設備に投資をしています。

最初にバリックを使い始めたのもアルテジーノです。現在はブルネッロには使っていませんが。

2002年に(オーナーが変わり)大々的な設備投資がなされました。主に畑への投資ですが、セラーも大幅に改修しました。発酵設備の一新、エイジングセラーの増設が行われ、2006年に完了しました。

 

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オーガニックやビオディナミについてはどう思いますか?葡萄畑やワイナリーで実施していることがあれば教えてください。

 

畑を管理する上で、次第にサスティナブルな方法をとることが多くなってきています。それは、ワインの質の向上や、ワイナリーのイメージを上げる為ではなく、良識に基づいた判断です。

畑での経験から、現在は海藻やアロエベラ抽出液などの有機肥料を使用しています。他には、硫黄と銅を使用しています。

殺虫剤や化学肥料の使用は、ヨーロッパの基準に基づいていますが、やむをえず使用せざるを得ない時以外は、なるべく使用しないようにしています。

 

 

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